今回の特集記事は、過去に掲載した記事の再編集・増補版
です。長文になりますので、お暇な時間にでもご覧ください。
脳の可塑性(兵庫医科大学リハビリテーション医学教室)(記事より一部引用)
脳科学の進歩によって、脳は考えられていた以上に可塑性を
備えていることがわかってきた。従来より脳損傷のリハビリテ
ーション(以下リハビリ)では、脳には可塑性があっても極めて
少ないと考えられていたため、機能障害の積極的な回復をめ
ざすより、能力低下レベルでの代償に重点が置かれる傾向に
あった。特に、脳卒中片麻痺の上肢機能については、最終的
に実用にならないことが多いという理由で、早々に健側での代
償を行うことがある。しかしこの10年余りの間に、脳の可塑性
を踏まえて患側上肢を積極的に治療するConstraint induced
movement therapyに関する報告が急増している。この治療法
は、脳の可塑性に関する新たな発見と相まって、リハビリの新
時代を築く治療法として、注目されている。
(引用ここまで)
人間も含めて、動物の脳には可塑性と言う特徴があるそうです。
つまり、脳は「変化をする」と言う事を示しています。脳とコンピ
ュータの違いは、ここにあると言っても過言ではありません。
「脳」は、状況や環境に応じて常に構造的な変化を伴いますが、
コンピュータは一度製造をされたら壊れるまでその状態を維持
します。一応、ソフトウェアの分野では「自己学習」の実装が進
んではいるものの、ハードウェアに限って言うならば「終生不変」
であります。状況に応じて、電子回路の構造が変わるわけでは
ないのです。
さて・・・
人の脳で重要な位置を占める「記憶」の機能は、一部の脳細胞
や神経組織だけが担当していると思われていましたが、脳全体
で記憶のメカニズムをサポートしている事が指摘されています。
人の持つ知能や理性を、ある程度仮想的に再現する事は可能
ですが、独立した状態で「進化出来る」仕組みを備えた機械は
実現しそうにありません。言わば、ソフトウェアもハードウェアも
勝手に進化して行くのが「脳」の凄いところなのでしょうね。
情報をフィードバックし、常に自身を検証・比較して、自力でプロ
グラムを書き換える事が出来たとしても、必ずどこかで限界や矛
盾が生じるはずです。更にハードウェアだけは、「誰か」が適切に
更新をしない限り、機能を拡張する事も進化を遂げる事も出来ま
せん。
分かり易く言えば、自宅のパソコンが勝手に最新型になる状況が
起こり得ないのに似ていますね。今後、人工細胞の開発や金属と
細胞の融合が可能になれば、「人造脳」を実現させる事は可能か
もしれません。むろん、その可能性は極めて低いと思われます。
しかし、シミュレーションの分野ではかなり解明が進んでいるそ
うで、例えばIBM社は、人間の脳の4.5パーセントを既に解析済み
だとか。2019年頃には全ての解析が完了する見込みだと言われ
ています。こうした理論的なシミュレーションが可能になれば、
いよいよ擬似人格が登場する様になるのかもしれませんね。
(ネコの脳に至っては、既に解析済みだそうですよ。)
こうした技術に加えて、朽ちないボディに人の知性と記憶を移植
できるようになれば、不老不死の人間?が実現するかもしれない
ですね。まさにマッドサイエンスの世界。
ところで、頭が元気で体は不調な人生と、頭が病気で体が健康
な人生とでは、果たしてどちらが幸せなのだろうか・・・。
「globe」のボーカルでもあるKEIKOさんは、39歳にしてくも膜下
出血で入院しましたが、救急搬送されてから46日目に退院をし
ました。退院数日前には、言語の回復が相当進んだそうですの
で、人の持つ回復力(脳の回復力)はかなりのものです。
人によっては避けられない脳疾患ですが、いろいろ調べて見る
と幾つかの症状がある事に気付きます。ちなみに、脳疾患には
次のものがあるそうです。
1 脳内出血(脳出血)
2 くも膜下出血
3 脳梗塞
4 脳卒中全般
1 脳内出血(脳出血)
Wikipediaによれば、高血圧性脳内出血と、非高血圧性脳内出
血とに分類されるそうです。高血圧性では、文字通り高血圧症
(動脈硬化含む)が主因となり、50〜70歳台に多いとされてい
ます。もちろん、生まれつき高血圧の人もいますが、血圧の耐
性は個人差があるので、一概に高血圧=危険性が大、と言う事
ではなさそうです。なお、出血箇所により、被殻出血、視床出血、
皮質下出血、脳幹出血、小脳出血などと分類されるとか。
また、非高血圧性の場合では、もやもや病、脳動静脈奇形、脳
アミロイド血管障害、脳腫瘍内出血、抗凝固療法に合併するも
の、アンフェタミン乱用に伴うもの、血小板の機能障害に伴うも
のなどがあるそうです。
2 くも膜下出血
詳しくは
東海大学病院脳神経外科の説明をご覧下さい。
症状の特徴としては下記の通りです。発症してからどれだけ短
時間で処置が出来るのかで、生死が決まるとさえ言われている
恐ろしい病気です。
1)突然の頭痛
2)瞬間的痛む頭痛、
3)今までに体験した事の無い様な頭痛
4)バットで殴られた様な頭痛
5)はげしい頭痛
極めて緊急性の高い病気で、処置が遅れると死亡するリスクが
急上昇します。事実、私の知っている人は処置が遅れて亡くな
りました。激痛に苦しんだ結果、家族が救急車を呼び、すぐに
搬送されたのですが、その後がいけなかったのです。症状が落
ち着いた状況を見て、病院の医師が軽症だと判断してしまった
様です。知人は帰宅をしましたが、それから数時間後に返らぬ
人となりました。
家族はもう少し病院に残らせて貰うよう頼んだのだそうですが、
医師の判断には逆らえなかった様です。その医師は、後で処置
が遅れた事を詫びたと言いますが、まだ若い女医だったとか。
3 脳梗塞
Wikipediaの記述によれば、別名で脳軟化症とも言うそうです。
脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、
脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に
近い状態になる事をいうとか。
脳は、出血をすると血液により運ばれていた酸素や栄養が行き
届かなくなるのですが、それは血管が詰まっても同じ事です。
また、出血の場合は脳内を圧迫する事になるので、一刻も早い
処置が必要になります。
血圧の高い人は血圧管理をきちんと行い、加齢や肥満で動脈硬
化が心配な人は定期的に医師の診察を受け、節度ある飲酒と禁
煙を守ることが、一番の予防策になると言われています。
脳疾患(脳卒中)についてまとめているサイトもありますので、
ぜひそちらをご覧下さい。→
脳卒中と闘おう!さて、一度失われた脳機能は絶対に取り戻せないのでしょうか。
実はここからが本題でして、かつて夕刊フジに興味深い記事が
掲載されておりました。→
年をとっても脳細胞は増える(夕刊フジ)「年をとっても脳細胞を増やす基本五カ条」と言うのがあるそう
です。(以下、上記の記事から抜粋。)
1.食事=頭をよくする食事に気をつける
2.運動=適度な運動は脳細胞を刺激する
3.休養=ストレスは脳細胞新生の大敵
4.睡眠=眠る間に脳は若返る
5.生きがい=脳が感動すると神経伝達物質が放出
上記は、脳細胞を健康的に増やす(あるいは細胞を延命する)もの
であり、脳細胞が大幅に欠損してしまった人には即効性が期待出
来ません。では、こちらの記事(JB PRESS)はどうでしょうか。
→
脳低温療法(JB PRESS)脳血管疾患になると、脳細胞は秒単位で破壊が進行すると言われ
ています。ところが、この治療は細胞の死滅を防ぐだけではなく、
破壊された細胞を回復させることができるとまで言われている、
画期的な治療法なのだとか。サッカーの元日本代表監督のオシム
氏を奇跡的に回復させた治療法として、脚光を浴びています。
しかし不思議ですね。
一度損傷を受けた脳細胞がなぜ回復をするのでしょう。それは、
脳細胞が持つ遺伝子の転写変化による細胞修復作用の為だと言
います。但し、発症から6時間内に治療出来ればの話だと言うので、
既に罹患している人には無理かと思われます。
となれば、最後の救世主はリハビリ治療と言う事になりますね。
そこで、ここに気になるサイトをご紹介したいと思います。
→
脳の可塑性に注目したリハビリテーション私は、これこそが本当の回復術なのだと感じました。その一方で、
リハビリを辛い訓練だと思っている人が多い事も事実です。ただ、
特定の理論に基づき薬物や遺伝子の治療を受ける事で、回復へ
のスピードと信頼性は担保出来るはずです。耐え難いリハビリも
あるでしょうが、人の脳はわずか数%ほどしか使われていないと
言います。残された大部分を眠らせているくらいなら、少しずつ
でも機能回復のチャンスを残された脳細胞に与えるべきでしょう。
この辺は、リハビリのあり方も含めて問い直したいテーマであり
ます。
ところで・・・
最近の研究では、幹細胞というものが注目をされています。細胞
分裂の時に、別の種類の細胞に分化する能力が秘められており、
ES細胞とも万能細胞とも言われています。再生医学が今注目を
しているこの働きと同様のものを、通常の脳細胞も持っている事
が分かっています。これにより、1個の脳細胞から多くの脳細胞
を再生することが可能になるかもしれません。
しかし、こうした技術には倫理の確立と言う重いハードルがあり
ます。→
《時評》脳を再生?〜「万能細胞」の利用はどこまで許
されるか〜(東京財団)医療は人の倫理観によって結果が左右されます。助かりたい人
が藁をもすがろうとしている時に、医療は非情になったりもしま
す。いずれにしても、倫理観を無くして結果だけを求めてはいけ
ないでしょう。
前記で「脳の可塑性」について考えてみましたが、ここからは
もう少し掘り下げて考察して見ようと思います。
「脳バンク」宣言…「うつ病」手探り診療脱却を(読売新聞)(記事より引用)
日本精神神経学会など4学会は22日、うつ病にがん対策並み
の国の取り組みを求める共同宣言をまとめた。広島市で開かれ
た日本精神神経学会で公表した。科学的な診断や治療法の確立
のため、うつ病患者の脳を死後に提供してもらう脳バンクの拡
充を訴えている。
共同宣言は、うつ病をがんや心臓病と並ぶ3大疾患と位置づけ、
「重大な社会的損失をもたらす病気」と指摘。うつ病で自殺を
する人が多い中、国の取り組みが遅れているとした。
うつ病は検査データや組織の観察からは病状がわからず、診断
や治療が手探りで行われているため、抗うつ薬の過剰投与や副
作用が問題になっている。共同宣言は、福島県立医大など一部
の機関が運用している脳バンクを公的なネットワークに広げて、
患者の脳で起きていることや、抗うつ薬の効果を分析するよう
求めた。
◆脳バンク=うつ病など精神疾患の患者の生前の同意に基づき、
死後に脳を提供してもらって科学研究に生かす仕組み。国内で
は福島県立医大が1997年から生前登録を受け付けており、
これまでに約30人分の脳の提供を受けた。脳は半分を冷凍保
存、もう半分をホルマリンで保存し、遺伝子検査や顕微鏡観察
に用いる。脳提供後の遺体は見た目が不自然にならないように
戻して、遺族に返す。
(引用ここまで)
心の研究は、脳を研究する事から始まる・・・もはや医学界の
みならず、人間界の常識になってしまった感がありますね。脳
とはそれ自体がミステリアスな存在で、僅か1100〜1500立法セ
ンチメートルの容積の中に、膨大な量の情報がストックされて
いると言われます。その規模は大規模な図書館並だそうですが、
計算で検証をしている方々がおられます。(下記参照。)
→
人間の脳には、何バイトの記憶容量があるのでしょうか。
(人力検索はてな)→
人間の脳の記憶容量に詳しい方、教えて下さい!!
(教えて!goo)→
脳の記憶容量(教えて!goo)→
脳の記憶容量は?(Super源さんの雑学事典)→
脳の情報量とコンピュータの情報量について計算して
みました(開発のあいまに)これらの方々の考えを参考にさせてもらうと、人の記憶容量は
全体で200TB(テラビット)前後と言う推測がなされる様です。
しかし、生命体である人の記憶容量をコンピュータの用語で定
義する事自体が、ナンセンスだとする意見もあります。
それは考えの大前提が異なる事と、脳は未知の領域が多くて、
どうしても推測や概算のデータに頼る為に、正確な答えが出な
いと言うのが理由だとか。そもそも脳は「全体で記憶する」と言
う研究データもあるほどで、更にミステリアスなものとなって
います。
以前は、脳の重さで人の優劣を判断する研究が行われていまし
たが、必ずしも知能と脳の重さが比例するわけではない事が分
かって来ると、男女の性差にまつわる研究へと変わって行きま
した。
脳の重さだけで見ると、新生児では女児の平均重量が約280グ
ラムであり、男児は330グラムと高い事が分かっております。
その後、脳は成長を続けますが、誕生をしてからの二年間ほど
で約3倍程度まで増えるそうです。以後は成人するまで、緩や
かに成長を続けていきます。
よく「三つ子の魂百まで」と言われるのは、こうした成長の過程
と関係があるのかもしれませんね。それだけ重要な時期だとも
言えます。しかし、男性側が脳の機能面で女性より優れている
と断定するのは早計で、実際はそれぞれに得て不得手の領域
がある事に着目すべです。
ここに一つ、興味深い記事をご紹介しましょう。
アインシュタイン博士の脳が、米フィラデルフィアのムター
博物館で公開中(カラパイア)(記事より一部引用)
現代物理学の土台となる相対性理論を生み出したアルバート・
アインシュタイン博士の脳が、米フィラデルフィアのムター博
物館で公開されている。博物館での常設展示は珍しく、話題を
呼んでいる。同博物館や米メディアによると、展示されている
のは、46枚のごく薄い切片の標本で、研究用に所有していた
地元の病院に所属する神経病理学者が寄贈した。
(引用ここまで)
興味深いのは、アインシュタインの脳の重さや神経細胞の数
は正常の範囲を逸脱していない点。代わりに、グリア細胞の
数(比率)が、常人に比べると際立って多かったそうです。
ここに、稀代の天才と呼ばれた人物の謎を解く鍵があるのか
もしれませんね。→
グリア細胞って何?(生物史から、自然
の摂理を読み解く)かつて、ベストセラーになった本に、こんなものがあります。
こう言った本を、試しに読んで見るのも面白いかもしれませ
んね。
(写真をクリックしてください。)話を聞かない男、地図が読めない女


売り切れていたらこちら→
話を聞かない男、地図が読めない女
嘘つき男と泣き虫女


売り切れていたらこちら→
嘘つき男と泣き虫女
一見すると完璧な物体の様に見える脳ですが、やはり複雑であ
るが故に不具合も出て来る様です。また、脳に関しては医学的
な話から宗教的な話まで、実に多くの説が存在します。昔は、
心は心臓に宿るとされましたが、医学の発達した現代では、心
の本体は脳であるとされています。しかしながら、心臓移植を
受けた人の性格や趣向が、臓器提供者のそれと似てくる話があ
るなど、脳だけでは全てを語れない「何か」がある様に思えて
なりません。興味は尽きまじと言った所でしょうか。
<関連過去記事>
→
「心の病」を検索<関連情報サイト>
→
脳(Wikipedia)→
脳と心のからくり→
うつは脳の情報処理能力低下(精神科本当の話)→
脳にまつわる話・脳の重要さ(札幌秀友会病院)