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救急車を呼んだ時の話

長文です。参考にならないかもしれませんが、日誌代りに書いておき
ます。

離島の医師不足が深刻だそうですが、僻地に赴任する若手が少ない
のはなぜなんだろうと考えて見ました。利便性が悪いと言うのもある
のでしょうが、「孤独」と「多忙」に根本的な原因があるのではないか
と考えます。

「孤独」と言うのは、複数の専門医がいない為に一人で多くの症例を
扱わないといけない状況であり、医療事故を恐れる意味でも余り好ま
れないはずです。そして、そこから派生する「多忙」さも、深刻な問題
であります。長時間の緊張を強いられ、時には極限の状況に追い込
まれる過酷な仕事を、人は長く続けられません。どんな医師にも休息
は必要だし、余暇を楽しむ権利があります。しかし、僻地医療の場合
は全ての責任が一人の医師に強く圧し掛かり、時には専門外の処置
もせねばならないと言う厳しさがあります。面倒で厳しい場所に人が
集まらないのは道理です。

翻って私の街はどうなんだろうと考えました。我が街は本土にあるの
で医療過疎ではありません。脳神経外科、精神科、内科、外科、眼科、
耳鼻科、皮膚科、精神科、泌尿器科、産婦人科と、ほぼ全ての科の
個人病院が揃っています。小児科に至っては入院も可能な専門病院
もあるほどです。歯医者も年中無休(正月も無休)のところが出来まし
たし、医療に関してはかなり充実しています。ただ、24時間受け入れ
可能な総合病院がないのです。実は、これが後で問題になって来ます。

・・・

先日、私の身内の容体が急変しまして、救急車を呼びました。仕事
から帰宅してみると、ベッドで寝たまま身動きしないので声をかけた
らまったく話が出来ない状態でした。若干の震えが見られ、すぐ救急
車を要請した次第。実はこの時、すぐそばには家族がいてテレビを見
ておりました。恐ろしい事に、私が帰宅して気付くまで容体がおかしい
事に誰も気付いていなかったのです。

なお、自分で119番通報したのはこれで二回目です。一回目は交通
事故に遭った人を見かけた為、職場の電話機から救急車を要請した
ことがあります。こう言う緊急の通報は非常に緊張するものですね。

通報するとすぐに「○○さんですね。」と言われました。NTTの固定
電話回線だったせいかすぐ分かるようです。自宅から消防署が近い
事もあって5分もしないうちに到着。すぐに車に乗せて貰いました。
が、時間が19時頃だったこともあり病院の選定に苦慮。10分以上も
車は停車したまま病院探しに追われました。そう、これが冒頭で書
いた「総合病院」の問題です。

まず最初に掛り付けの病院に問い合わせして貰ったところ、院長が
出張中で不在とのこと。他の病院を探して見つからなかったら再度
電話をするように言われたそうです。

次に、以前お世話になったクリニックに連絡。しかし、うちでは処置
が出来ないと言われました。そこで、市外の大きな病院へ連絡する
事になったのです。その病院は、二年前に敗血症を患った時にクリ
ニックから救急搬送して貰った際の受け入れ先でした。が、今回は
受け容れ出来ないとこれまた拒否。地元で探せないかと言われた
そうです。困った隊員は最初の病院に再度連絡。代診の先生しか
いないが、それでも良ければどうぞとの返事を貰い、やっと搬送。

その間、患者は震え続け会話もままならないと言う修羅場な状態
でありましたが、車中は暖房がしっかり効いており、血圧や脈拍も
安定していた為、私も少しずつ落ち着きを取り戻して行きました。

ところで、今回の事で気になったのは次の点です。メモがてら書い
て見ます。

1)なぜか隊長がしつこい。
 隊長が隊員にいろんな指示を出しながら、同時に病院へ電話を
 かけてくれるのですが、同じ質問を何度もされました。足は悪い
 のか、掛り付けの病院はどこか、他に持病はないか・・・他にも
 いろいろ。同じ質問に私も繰り返し答えるのですが、同じ質問
 を何度も何度もされるので少し不安になって来ました。しかし、
 今になって考えると、それだけ慎重に慎重を重ねてくれたのだ
 と思います。

2)隊員の一人が新人だった。
 担架で運ばれる時に、ベッドから移すのが手間でした。その辺
 はみなさんプロでしたので隊長の指示により移すところまでは
 何とか行きました。問題は部屋から廊下へ出す所です。担架
 を少し斜めに上げないと出せなかったのですが、新人の人は
 どうして良いのか分からなかった様子。そこへ先輩の隊員が
 指示を出して、また私も手伝いながら何とか出す事が出来ま
 した。臨機応変と言うのはとても難しいですね。場数を踏んで
 いる隊員は判断も素早いと感心しました。

 また、車中において新人の人がドアを開けっ放しにしていたら、
 ちゃんと閉めるように指示をされておりました。それと測定機器
 につないだ後で最初の値を確認しておく必要があったようです
 が、新人の隊員はその事を失念していた様です。隊長から最初
 は幾らあったのかと聞かれ、即答出来ずに絶句していました。
 4月だから場馴れしていない新人さんだったのでしょう。これから
 色んな経験をしてエキスパートになって行くのだと感じた次第。
 私も心の中で「がんばれ!」とエールを贈りました。

3)人が集まってくる。
 救急車を呼ぶと近所の人が集まって来ます。我が家も近くで音
 がすると見に行きますので、野次馬根性なのはみんな一緒の様
 です。ただ、誰も無関心で出てこないのは寂しいもので、気にかけ
 て貰える事に感謝をしました。こう言う時は人の繋がりの有難さを
 思います。

4)救急車は揺れが少ない。
 大きな振動が来ないように作ってあるようで、あまり揺れません
 でした。実は、私自身も救急車で運ばれた事があります。この
 時はサイレンの音を聞いた後で意識が無くなりましたから感想
 の書きようがありません。そして、付き添いで乗ったのは今回が
 人生で初です。まさにテレビドラマで見たシーンそのままでした。

5)病院は静か。
 当たり前ですが夜間の病院は静かです。先生と看護師の声しか
 聞こえず、検査と処置をして貰っている間はただ待つのみです。
 先生は最初に書いたように代理でした。一人、ベテランの看護師
 さんがいまして、その人がいろんな指示を出していました。病院の
 中で先生と看護師の声だけが響いていると言う状況です。

結果的に感染症の疑いを指摘されて、別の病院へ搬送される事に
なりました。先ほどの威勢の良い看護師さんが救急車の要請をして
いましたが、大声で「うちでは処置出来ないからです!」と怒鳴って
おりました。この時、救急隊の方が何と言ったのかは分かりません。
ほどなくして救急車が到着し、隣町の総合病院へと向かいました。

私は自分の車で追いかけて行く事とし、救急車には家族と看護師
が同乗して行きました。こんな時間に面倒をかけて申し訳ないなと
思いつつ、やっと大きな病院に向かえることで安心しました。

厄介だったのは隣町の病院は二駅も離れた場所にあったので、
私に土地勘が無かったことです。しかも夜間ですし、カーナビは
長らく外してあったせいでバッテリの充電が間に合わず使えない
と言う八方塞がり。先に行っている家族からはまだ来ないのかと
催促が来るし、別の身内からはどうなったのかと聞かれる始末。
道は分からないわ、電話は受けないといけないわで、ちょっとした
パニックでした。そして最悪だったのは、病院に通じる周辺の道路
が工事中でう回路になっていたことです。近くのコンビニの壁には
周辺の地図が掲げてあったのですが、現状が違っていました。

今まで行ったことも無い病院に行くのは一苦労です。ましてや夜間
ですからワケが分かりません。地元の人に聞いても周辺の情報を
こっちが理解していないものですから、話半分といったところでした。
やっとかっとで病院に着きましたが、赤い回点灯が見えないと見つ
ける自信がありません。それぐらい分かりにくい場所でした。

病院に着くと看護師の人が待っていてくれました。当直の医師の
ところへ連れて行かれ、検査結果と今後の事を説明されました。
話によると、感染症により腎臓が悪化し高熱が出た模様。この高熱
が悪寒を誘発して、会話が出来ない状況に追いやっていた様です。
抗生物質を投与し、一週間ほど入院して治療する事になりました。
この時の熱は40.5℃だったそうです。

先生の話では、糖尿病を持っていると急速に症状が悪化する傾向
にあるそうです。だから、糖尿病の治療を受けている人が感染症に
かかると良くないのだとか。実際、症状が出た日の昼は普通に会話
が出来ていたそうなので、夕方にかけて急激に進行した模様です。
家族の者が気付かなかったのは、昼間元気にしていたからであり、
この急激な変化こそが糖尿病+感染症の恐ろしいところだと言え
ます。

我が家は糖尿病の家系ではありませんが、10年ほど甲状腺の治療
を受けていた関係で糖尿病が進んでしまいました。ところが病院を変
えたら甲状腺の治療は中止になりました。しかし、一度進んだ糖尿病
は治らない様です。甲状腺の治療薬は糖尿病とも密接な関係がある
らしく、医師の判断で甲状腺の治療(投薬)を中断したと言う次第。

であれば、今までの治療はなんだったのかと言う疑問もわいて来ます。
もっと早く治療を中断出来ていたのではないかと、今では怪しく思って
いるところ。

糖尿病の怖いところは治療の邪魔をすることです。前回の敗血症でも
その点を指摘されました。血糖値が落ち着かないと次の治療に進め
ないのだそうです。医者としては、この血糖値のコントロールに凄く
苦労するそうでして、全快するまで日数を要する事になりました。

今回は発見が早くて1週間ほどの入院になりそうです。診断も敗血症
ではなさそうですが、素早く対応して貰えた病院の関係者には頭が
下がります。

しかし、我が街にも24時間受け容れ可能な病院が必要ですね。例え
どんなに診療科目が充実していても、個人病院だけでは不安です。
急患はいつ発生するか分かりません。今回は夜の7時台だったから
まだ良かったけど、これが真夜中だったら果たしてどうなっていたの
やら。

今回は感染症の原因も見えてきたので、入院先の先生にお願いして
紹介状を書いて貰う予定です。

・・・

余談ですが、古い病院は夜中に行くと独特の雰囲気がありますね。
今回お世話になっている病院は、ある県議が経営する系列病院の
一つでした。その意味では個人病院なんでしょうけど、地域の大き
な総合病院としては歴史のある病院です。(○州会ではないです。)
そして、急患を24時間受け容れてくれる貴重な病院です。同じ市内
と言う事もあり、市外の病院に比べて受け容れて貰い易かったので
しょうが、受け入れ先がすぐに見つからないと言うのは怖いですね。

実は先に断られた市外の病院ですが、ここには「夜間緊急サービス」
と言うのがあります。入院歴のある患者はこれを利用出来る謳い文句
になっていましたが、地元の病院を探せと断られてしまいました。

消防署によっても異なるのでしょうが、携帯電話で受け入れ先を探す
だけのやり方は、地域医療の貧しさを示しているようで気がかりです。
例えば東京都では「地域救急医療センター」と「救急患者受入コーディ
ネーター」の二機関が連携しており、搬送先を素早く決定出来るように
しているそうです。予算や人員確保の問題もあるので地方では難しい
かもしれませんが、救急隊員が困らない程度には整備して貰いたいと
痛切に感じました。同時に、離島や僻地に住んでいる人から見れば、
事態はもっと深刻でしょう。
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コメント
2971: by カズ on 2015/04/14 at 21:45:19

この件に関しては医師会と厚生労働行政に問題があるように思いますよね 基本病気は時を選ばずというかむしろ夜中に悪化する場合が多いでしょうし
それに対応するシステムを構築スべきですよね
ボランティアでしろと言ってるのではなく
仕事としてですからね・・・・
そのようなシステムが出来るように 医療報酬の
改定などすべきでしょうね・・・・

2976: by 管理人です on 2015/04/16 at 19:34:09

これは痛切に感じます。

救急車の中では10分ほどの時間でしたが、
電話でのたらいまわしが目の前で起こって
おり、待ち時間が凄く長く感じられました。
車も行き先が見つかるまでは出発出来ない
から大変です。

今回は発見が早くて1週間の入院で済みまし
たが、もし私が夜勤でいなかったらもうダメ
だったでしょう・・・。

今回受け容れてくれた病院は民間病院です。
その地元では上位で当選を続けている議員
が経営する総合病院でした。老朽化が酷い
為今度建て替えをするんだそうです。

選挙ではどんなに立派な大義名分を訴えても、
実際に人の命を救ってくれる人には敵いませ
んね。議員や病院経営者なんて、金の亡者
ぐらいにしか思っていなかった自分が恥ずか
しいです。

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